「こいが」
「何かね」
「こい」
「始まったのかね」
「泳いでいます」
「池の、と上に付けたまえ」
「赤に金、黒。白眉らんちゅう」
「らんちゅうは金魚じゃないか。何を知ってるんだ君は」
「太って色よく 混ざりまぁ結構な」
「混ぜ物などはしとらんよ失礼だな」
「こいこく こいこく」
「食い気かね」
「僕をなんだと思ってるんですか」
「なんの話をしているのかね」
「今に始まったことじゃなしいろこい。ところであなたがね、僕がこの前5本足の犬を見た、と言った時」
「どうも話が噛み合わんな」
「それは尻尾だ、と言ったんです。それでお終いだ」
「もうおしまいかね。それに何の意味があるのだ」
「どうもこうもないですよ。あなたはそれでお終いにしてしまった訳です。封じられた」
「主題が錯綜しているようだな」
「ここでも封じることはないだろうと、糸口全て閉じ切って一体何が面白いのだろうと。理解に苦しむ」
「不満があるならその場で言えばいいじゃないか。いつ言ったかも分からない事をここで責められても」
「閉じ切り足を切る。あの犬はあなたに足を切られていた訳ですよ。実に」
「なんとも不愉快だな」
「身を持って知ればいいんです。この羊羹は甘すぎる。意味など求めるから囚われる」
「すべてにかこつけて文句を言いたいのか。一体何が本題だ」
「僕は竹の皮で包まれたものが好きです。風味が違う」
「しかしこれは上等だ。君だっておととい三つも食っていたじゃないか」
「梅、抹茶、栗甘露。この羊羹は砂糖が荒い。むさくるしい」
「そんなに不満ならお茶と一緒に流してしまえ。いちいち気に障る」
「また雲が出てきた。明日は雨かな」
「今度は逸らすつもりかね」
「火事がたくさん出ないといいです。火が燃えるのは、人間の本能を刺激していちいち都合が悪い」
「弱った、どうもいまいち掴め無いな」
「鱗がぬめぬめ、池の中でも灯るようですね。また光った」
「君は本当に掴み切れなくて困る。いちいち困る」
「それだからあの時手を出せなかったんでしょうあなたは気付いていない。ハハ」
「本音はそれか」
「鯉も甘露、といいますね。僕は栗が好きです。ほらあそこの子供が煙草を吸っている」
「いつまで続くんだ」
「終わらせる気も無いんでしょう?」






団欒