戸田鬼太郎 (ニ胡)



あせた朱塗りの、ぼろ傘化け傘がくるくるくる回って粋なポーズで着地する。
「おまえにまわしものだよ」説明も無しで夕暮れ西風飛び乗りひとっとび。
後に残ったばさりと日記帳ひとつ。
なんだそりゃ。

っていうかさ
そのなんだ
遅くないか
俺の番。
ずいぶんまわってたみたいじゃないか。
いろんなことがあったみたいじゃないか。
なんだよ全員知った顔だよ 好き勝手にやってんなあ 松岡なんか2回もまわってんじゃんどういうことだよ
た のしそうだな みんな

雪が降って、雑踏にまみれて、コーヒー拭いたり、流れたり、
花束投げるような少女がいて、頭にくらう間抜けがいて、月に叫んだ懲りない科学者、泣き上戸の酔っ払い、
えぇとお前あぁ、パラレルワールド。同じ呼び名の同じもの。ここにもまわるの奇跡だな
チョコレートと上目使いの甘ったるいコンビ愛、甘酢に泣いた気の良い三下、
た のしそうだな
た のしかったんだな
みんな

で、なんだ、
その、あれだよ
なんで俺のところに
まわるのこんなに 遅いんだよ。

松岡なんか2回もまわってるぞってこれさっきも言ったか?あの な、鬼太郎って 3人居るじゃないか。なんでひとり重複してるんだよおい。3人って思ってるのって俺だけか?
あのなあ、俺をなあ、
無頓着とか無神経とか 単純だから小さい事気にしないだろう大丈夫とか
そんな風にとらえてるやつ誰だ。あとまわし でいいやとか思ってたやつ誰だ。あぁ真剣に忘れてた とか呟いたやつ 誰だ。
これでも結構傷付きやすいんだよ
こら速攻で否定するな
えぇ今更出来ないとか言うな
少しは俺にも
優しくしろ。


「おまえにまわしものだよ」
俺が今度は
直接行って
まわしてやるから
待ってろよ
次のやつ。
次の世界へ。