人喰いの歌 (魔人探偵脳噛ネウロ・ネウヤコ/二胡)




※微妙なエロ注意(宜しければ↓)




 公開され惨事。公開され讃辞。賛美燦燦。美食家の宴。頬肉は削げ落ちた。あれはなんてきれいな鳥。これはその魔人の目玉。腹部膨満。腹部膨満。公開され惨事。贋物デカダン。カニバル。カーニバル。どうぞひとくち齧らせて。  おなかがすいた おなかがすいた どうぞおまえを かじらせて。


「3つの夜」
「3つ数えろ」
「いつものようにおやすみを言って」
「いつものように明かりを消す」
「ベッドの上で水を飲んで」
「枕元にその残りを流す」
「冷たいしずくが光るコップ」
「16秒間と少々」
「壁を見つめ過ぎた予感」
「明日は雨」
「壁が歪んでいるような気がする」
「髪が伸びてゆく」
「月が腫れてゆく」
「初めて見る顔をしているのだ」
「がつがつと」
「そこに喰らい付きたい」
「だれの?」
「膨れゆく腹部に喰らい付いてやりたい」

 食べても食べても満たされないなら、なにを食べればいいのかなぁ。

 空いたすいたと臆面も無く、恥知らずにも程があるにも関わらず、そこら中ふれ回って喚き散らして、さて真実はなにを食べたいと願うのだろうなぁ。

 気の違ったほどにも。あんたは。
 気のふれるくらいに。貴様など。

「床を引きずりまわして」
「あいつの爪の形は鳥」
「口の中から何かが出てゆく」
「口の中に何かを入れられる」
「眼球など覚束無い」
「目の中の映像は遠くなってゆく」
「ぐらぐらと歪むその姿」
「中身が吹き出してしまうよ」
「己の姿をかき消してゆく」
「ベッドの上」
「踊り出す足」
「ここは何処で、自分は誰で、動くのは何故で、こんなことをしている理由も何で」
「“わたしはだれ?”“たすけておねがい?”」
「あんたなんかちっとも怖くない」
「貴様と我輩は同一固体だ」
「こんなの望んだ覚えはないわ」
「満たされない空腹を共有している」
「あんたなんかだいきらい」
「なにをたべたら、満たされる?」
 おなかがすいた おまえがすいた だからどうぞ かじらせて。


   無理に歪めて広げられる足の間に、覗けるその魔人の姿は、妙に微笑んで楽しそうにも、嬉しそうにも、見えた。その金色と黒の髪をすくう。手首ごと噛み千切られるような気がする。我を忘れて悦楽で、楽しそう。楽しそう。私は、そんなあんたの姿を見るのが、とても嫌いじゃなかった事を思い浮かべる。  子供みたいだ。だから、多分、そうだね喰らい付かれても私は平気なんだろう。あんたなんかちっとも怖くないし、
 あぁ、あんたはほんとにきれいな眼だよね。漆黒の瞳孔。取り巻くエメラルド虹彩。きれいな鳥だ。獰猛な。むさぼることばかりを考えている。むさぼることばかりを考えていつも飢えている。食べる時だけが幸せなんだよね。
 舌肉は驚くほど柔らかいのだ。さぁ膨れゆけ。執拗な美食家は飢えている。孕め満月。脆弱な肢体。無機能の陰部。膨れゆけ膨れゆけ謎はここにある。美味礼賛。少女の奇声。断続的な奇声。孕めよ満月。膨れた腹の餓鬼。  空腹を満たす謎ここにある。

   いいよそれならいざ満たせ。究極の謎、ここにある。