3時のお茶の時間かっきりに君んちへ行くから
 呼び鈴押したら 出てきてね。


 実に痛快な出来事だろうな
 もしあいつらが僕んちへ お茶の時間にやって来たなら
 3人揃って自己紹介は「こんにちは、救世主です」
 スキップでも踏みながらあいつらきっと、エロイムエッサイムを大声で歌いながら通りをこちらへやって来るんだ
 そして僕が扉を開ける。
 はじめまして こんにちは 僕ら互いに 悪魔くん です。

 3時のお茶の時間かっきりに登場するから
 呼び鈴押したら 出てきてね。
 たぶんきっとね 運命が 邪魔をするだろう。
 でなきゃ常識 均衡世界がどうのやら 神様のようなものが。
 ありえないだの 壊してはいけないだの
 3時になったら お茶の時間で
 実に痛快な出来事だろうな
 もしあいつらが僕んちへ お茶を飲みに やって来たなら


 わかっているんだ 叶うことは無い。



 なんて誰が決めた。


 3時になったら お茶の時間に  すいぶん諦めがいいんだな、お前たち。
 勝手に達観されるのは好きじゃない。
 神や運命はもっと好きじゃない。
 スキップ踏んで、大声で歌いながら それこそいつもの調子で大騒ぎでやって来たらいいだろう いつものお前たちのその調子でだ
 お茶を飲みに お喋りの為に
 3時のお茶の時間かっきりに 時間厳守で やって来たなら
 扉を開けて 迎えてやる。
 ようこそ救世主 3人の 別の次元の 物語。 出会う事無い宿命の いいや 出会うべくして出会うのさ 友達。

 ひとりはきっと、無邪気な観察眼。子供じみて破天荒なリアリスト。
 ひとりはきっと、慈愛の慧眼。清濁合わせて飲み込む静謐なカオス。
 僕は王座だ。一同がテーブルに集う。雁首そろえて、いざ、爆笑。
 女王様みたいにもてなしてやるよ。
 騒音まみれの生クリーム、ストロベリー。三月兎のティーカップソーサー。極彩色の乱痴気レディグレイ。
 しかし僕の皿の上にあるものは特別製だ。
 銀の蓋を取り除けば、皆一斉に目玉をひん剥いて声を上げる。顔色なんか緑に変えて、そうだな使徒のひとりかふたりは、腰を抜かしてしまうだろう。
 それまでは秘密。特別製の、僕の皿の一品。
 皆がそれに仰天する。僕はニヤニヤ、片頬上げて、その瞬間を、待っている。


 あぁそんな日が 来れば良いのにね
 ねえいつか そんな日が 来るのなら 良いのにね
(そしたらきっと すごく良かった すごく楽しかったのに きっと 何よりも)
(いっしょに せかいを すくえれば よかったのに ねえ)



 3時になったら お茶の時間になったら
 ぼくたちは君んちへ行くから
 呼び鈴押したら 出てきてね。
 もしそうなったら、そうなれたら、きっと凄く楽しい。すごく楽しいのにね、と、あいつはそう言った。
 実に痛快な出来事だろうよ
 もしあいつらが僕んちへ お茶の時間にやって来たなら
 実に愉快な出来事だろうよ
 楽しいって、いうのに似てる
 それともこれが


 勝手に諦めた顔されるのは大嫌いだ。
 訳知り顔で決め付けるのはそれこそ愚の骨頂だ。
 何が起こっても不思議じゃないから とひとりは言った。
 夢なら届くよ いつの日か その心に とひとりは言った。
 それなら僕は、何と応える?
 見た事の無いあいつらの、その目、その瞳に、浮かぶ輝くその色を、目前にしたその瞬間。
 呼び鈴が鳴らされる。扉を隔てて、その向こうで、僕はどうやらその時を、心待ちにしているらしい。

 まぁ賢明とは呼べないよな。
 救世主としては事の他、適さない条件だろうな。でも、まぁ、いや、いや、いや。
 3時になったら 君の所へ
 まぁ、とりあえず、聞いてくれ。
 お茶の時間に 君の家へ
 もしそんな日が、いつか来たなら、
 呼び鈴押したら 出ておいで!
 話そう 喋ろう 語り尽くせぬぼくらの壮大な夢 万人が 幸福になれる 人類の 理想郷の 事を!

 もしそんな日が、いつか来るなら。
 そんなめくるめく騒々しい日々 あぁ、悪くない。悪くは、ないよな。


 まぁ賢明とは呼べないけどな。確かにな。




 いつの日か、3時に。
 じゃあ3時に、お茶の時間に。
「メシア、何をお書きになってるんです?」
「あぁ、ちょっとな、……友だちを呼ぶプランを、練っているんだ」


 ぼっちゃまが『ともだち』とか言われたぁぁぁぁと勝手に覗き込んで泡食って走ってった使徒のやつの事は完全に無視してだ、
 まぁ、なんだ。
 3時になったらな、お茶の時間に。
 呼び鈴押したら、出て来てやるよ。


 まぁ、見てろ。
(在り得ない事、荒唐無稽な事、罵詈雑言でも有象無象でも、夢想でも)

 不可能を可能にするのが天才だ。