Pinkは桃色、ピンク色。 極地、最高、絶好調。 The pink dream で、最高の夢、って意味。 そこに性的意味合いは無い。 刃で刺す、突き通す、穴を開ける。 Pink elephantは酔った時の幻覚 ピンクのゾウさんが飛んでいる。 じゃあ Pink eyesは? 「結膜炎だよ」とあの子は答える。 君、あなた、今、結膜炎なの。見えてるものも、見えていないの。だから幻覚、見えちゃうの。 見えてるものは、幻覚だから、 「だから誰にも、黙っててね!」 あの子は叫んだ。歌い出すように始めるように。あの子が叫んだそう次の瞬間、地面に光が、魔方陣に輝きが。クラッカー弾けたシンバル鳴った、ファンタスマゴリア始まるよ! 銀とピンクの光の柱。天へと噴き上がれ立ち昇れ地下からの流星群。闇夜にそびえた巨大な恐ろしい怪物はうろたえ、威嚇を止め、自分を背にしたあの子は笑う。突然現れて月夜、自分に襲い掛かってきた怪物の前に立ちはだかったあの子。唇をおもいっきりぎゅんっと曲げて、楽しそう、楽しそう、遊びを前に、笑い出す口、こらえている様。くりくりとしたビー玉みたいな大きな目、光を受けて、まるで発光ピンク色。どこかで見たよな黒と黄色のボーダーセーター。 地面に描いた、数字が輝く。円陣の中の、アルファベット光量を増してゆく。地が裂ける、光の噴火。流星まぶした暴風の色、白銀。吹き上げられたあの子の転げた笑い声、きゃはは。魔方陣の中央に、浮かび上がるのはひょろ長いシルエット。地軸も時空も切り裂けろ。つんざけ、貫け、突き抜けろ、いでよ今夜も呼び声に、応えろ! 「メフィスト!」 「呼んだか真吾。うるせえな」 「あの怪物を、やっつけろ!」 光の噴火に吹き上げられ夜空に回るあの子、現れたひょろ長いシルエットの、悪魔みたいな、紳士の背中に、すとんと着地し収まった。ご機嫌斜めの紳士の眉間。闇よりすてきなシルクハットにマントを羽織り、ぴかぴか不吉なステッキ下げて、絵に描いたみたいな、長い鼻。ほら良く知ってるでしょう、眠る前に読んだおとぎ話の、悪い悪い、魔女。小鬼。悪魔。悪魔とそっくりおんなじだった。 眠れない夜、悪夢みたいな夜、魔方陣から飛び出して、瞬く間に彩り変えた、そうまるでこれはおとぎ話。まるで幻覚。まるで夢物語。子供が好きな、子供のせがむ、眠れないのと、おはなしを 「チョコレートあげるから、さあ行け!」 「やなこった。お前たまには自分ひとりで何とかしてみろ!俺ぁいい加減知らねえよ。いつも何とかしてもらえると思ってたら大間違」 「うるさいなぁ喋ってたらやられちゃうよ、ほら!来るぞ!おばけ!」 夜いっぱいに、響き渡るうなり声を上げ、怪物は吠えた。毒々しい巨大な一つ目は恐ろしげに二人を睨み、泥の様に悪い夢の様に、とろけ続ける底無しの口から、がばり!飛び出た、七色曼陀羅おびただしい夢幻の触手! 「魔力、ハットノコギリ!」 シルクハット宙に舞い上がる。あの子を背負った悪魔の紳士も、同時に夜空へ飛び上がる。火花がばちばちコークスクリューうなりを上げて、回転する帽子は目も眩むスピードで、次々触手をぱちん!ぱちん! やあやあ凄いや凄い騒ぎだ、切られたそばから夜空で爆ぜる。七色曼陀羅極彩色の、花火が闇夜に炸裂だ。降り注ぐ火の粉はシューティングスター。轟く怪物の悲鳴の間、飛び交いすり抜け帽子は笑う、不気味に!愉快痛快トリックスター。 拍手喝采、大熱狂。あの子が手を挙げ、歓声を上げた。紳士は溜め息。ちょっと舌打ち。 「楽しそうだな」 「楽しいよ」 「不謹慎だぜ、メシアのくせに」 「だってこれは夢だもの。ねえ君!そこに居るあなた!今見ちゃっているもの、これぜーんぶ夢だからねえ!」 ケラケラキラキラ、星屑。あの子の落とした笑い声。悪魔の紳士の背中に乗って、夜間飛行悪夢の退治。月をかすめて、毒牙をかわして。口笛吹いたよブラボーブラボー。なんて素敵な二人組! 星よりも輝くんだ、あの子の瞳。 光を受けて、大きな大きなピンク色。 最高。 「もうこのくらいにしとくぞ。じゃりども夜は、眠るもんだぜ」 眠る前に、読む物語。 暗闇なんて怖くない、夢の中でも楽しく遊びにゆけますようにと。 だけどほんとは、眠りたくない。ぼくまだ全然眠たくない。 だってほら夜って、どうしてこんなに素敵なの。 「さあもうおひらき、おやすみなさいだ」 あちこちから湧き起こるブーイングの嵐の中、悪魔の紳士は素知らぬ顔の慣れた素振りで、ひゅう。ひときわ高く、空中へ躍り上がった。背中のあの子もふくれっ面で、何か文句を言っているけど、鉄面皮は聞く耳持たない。子供の言い分聞きやしない。 夢の続きは、夢ん中で見ろよ。ぐっすり眠って、せいぜいいい子にしてやがれ。 「魔力、絶対零度!」 まばゆい冷気が、大きく開いた口の中から、レーザーみたいに発射された。おやおや怪物は最後の断末魔を轟かせ、一瞬、辺りは昼間みたいにぱっ、と輝いた後、そこに残っていたのは天辺から爪先までかちんかちん!ダイヤモンドに閉じ込められちゃったみたいな、怖い、怖い、怖かったもの!これまで自分をさんざん震え上がらせ泣かせた、恐い、恐い、あいつ!ざまぁみろだよ、成れの果て! 「なんだ、とどめをさせだと?ここまでやったら充分じゃねえか……わかったよわかったよ笛は止めてくれ……あの日うっかり、呼び出されて出てきちまったあの時の事。俺は一生後悔するよ」 だけどまた夢の中までも。怖くて、震えて、泣いてたりしたら。一人で我慢出来ない程の、恐怖に襲われ泣きじゃくる時は。 呼びたかったら、呼びゃあいいだろ。 うるさくって、かなわんからな。 「魔力、細胞変化!」 ダイヤモンド一勢に弾け、夜中世界中一面に、小さなこの手のひらの上にさえも降り注ぐ。 爆発、煙が、あれ、この匂い?飲んだことないけど知ってる、この匂い? 子供にゃ早いと飲ませてくれないずるい大人の、 「真吾!ばかっお前まだ眠らねえつもりだな!?」 カフェイン! 「結膜炎だよ」あの子は言う。 君、あなた、今、結膜炎なの。だから幻覚、見えちゃってるの。今見てるものは全て幻覚、幻覚、幻覚なんだよ。 ……あぁ、どうやって目を閉じてもらおうかなぁ。メフィスト一緒に考えてよ……あーもういいよ一人で考えるよ、ちぇっ。うーん、うーん、そうだなぁ。うーん、うーん……、 「あぁそうだ!君さ、今、目。かゆくてかゆくてたまらない!」 結膜炎なの。今にも、そうら。気が遠くなる程狂いそうな程。 「かゆくてかゆくてたっまらないよ、ねぇ?ほーら、ごしごしと、ごしごしっておもいっきりこすりたくなって来たでしょう?ほらほらもう開けていられないよ!頭おかしくなっちゃうよ!」 ぼくが今から、3つ数えたら、 もう君、あなたは、こすらずにはいられません。 じゃあそれじゃあね、いち、 幻覚なんだよ、にぃ、 「さぁん!」 ――――あぁほらもうこんなに、こんなに真っ赤っ赤! 眠りたくなくてぐずってた、夜更けの子供みたいに! そらそして目を開けてみると、あの姿どこにも見当たらない! ベッドに入って見ていた時の、夢だったみたいに! はい今夜はここで御終い。 |