松下一郎 (ニ胡)



けばけばしく光り輝く街に居る。
そうだよなもともとこんな場所だったんだ。
七色の煙が渦を巻いている。夜にしか目覚めないものたちが嬌声を上げてうごめきひしめき合っている。
世紀末はどこにでもある。
ここがそうだ、その入り口だ。
僕はこの街を闊歩する。
千年王国の入り口だ。

フロアーを横切る時に、歯の無い腰の曲がった老いぼれが、
僕の顔見て、両手を広げた。
救い主様おめざめになられましたのか
ざわめく人波に揉まれながら、幾度も叫んで付いてくる。
あなたこそわたしをすくってくださる 入り口から光を入れてくれなさる
あぁ皆に知らせねばこの奇跡を伝えねば 主がきませり時はきたれり
老いぼれた震える指先でプッシュする。ワンコール、ツーコール、
スリーコールで光が炸裂。耳をつんざくホログラム。フロアーの真ん中に墜落して破裂。僕が取り上げ放り投げた携帯電話。
救い主などなりたくもない。
歓声が巻き起こる。
忘れたか。ただ世界を変えるだけだ。

太ってよろめいた飛び方の漆黒カラスが、
僕の肩に舞い降りて、ノートを差し出すから面食らった。
誰でもいいから回しますなんて、あの子供相変わらずだ何を考えてるんだか
くたびれ果てたカラスは僕のコーヒーを飲み干して満足そうに眠り込んでしまったので、
まぁ、一応、書いてやったからな。ここにこのテーブルに置いておくからな。気の向けば誰かが取りに来るんだろう?
コーヒーの勘定はカエル男の後払い。



050 に続く!